天使から(3)
二か月後。
現在の病院は救急病院だった為、転院せざるを得なく・・・。
兄と姉が病院のケアマネジャーと一緒に、実家から近い場所で、受け入れてもらえそうな病院を探している時、自宅にいた私は天使から「別の方法があるよ。」と言われた。
「別の方法とは??」
その問いかけに天使からの回答はなかった。
(自分で考えなさい、ってことか・・・。)
やっと転院先が決まり当日私が立ち会うことに。
お世話になった病院の皆様に挨拶し、転院先の病院に到着すると、早速担当医が現れ、病状確認をされました。
その後先生が一旦席を外された時、父が「もう入院したくない。元気なったから家に帰りたい。」と、この期に及んでそう切り出した。
多少歩けるようになったとは言え、自宅療養で急変した場合、誰も直ぐに駆けつけられない遠距離にいるので、一人暮らしではリスクが高過ぎる。
父はステージ4の肝臓がんでもあるが、今回は急性大動脈解離(血管壁が乖離する病気)で倒れており、転倒しただけでも衝撃で死に至る危険性を孕んだやっかいな病気だった。偶然にも心臓、肺、内臓近くの大動脈の乖離は発生していなかったので、先生からは(これは奇跡だ!)と言われたが、爆弾を抱えているには変わらない状況。
それにこの病院は兄や姉、病院のケアマネジャーが一生懸命探し、先生から紹介状を頂いてやっと受け入れが認められ、自宅から一番近い都合がいい唯一の病院だった。折角受け入れてもらう事ができた貴重な病院をお断りしたら、もう助け船は出ないかもしれない。
しかし父はもう病院は嫌だと言う。
その気持ちは少なからず家族の中で入院経験がある私には理解できた。
取りあえず入院してから経過観察で先生のOKが出てから決めればいいじゃないか、という自分の声が湧いてきたが、そのように悠長に考えている場合ではない気もする。
先生が戻ってくる前に決断しなければならない、今日この場で私が決めなければならない、なぜかそんな風に差し迫ったものが押し寄せていた。
(今こそ天使の声のお導きを!)
私は天使にお願いして、どちらが父にとって最善かを尋ねてみた。
そして窓辺に行ってそっと目を閉じた。
待てど暮らせどシーン・・・。
天使が答えてくれる気配すらない。
(どうしてこんな肝心な時に!)
そうこうしているうちに先生が戻って来てしまった。
先生は、話しがうわの空の私と父には気付かず、ベラベラと細かい説明をし出し、随分説明して頂いた後に、何も決断できていない筈の私自らの口で入院を断っていたのでした。
全て話し終え、病院を後にした時、(本当にこれで良かったのか?私は間違った事をしたのでは?)そう何度も自問自答を繰り返していた。
父の方を見るとこれから自宅に居られることが凄く嬉しそうだったので、これで良かったのかもしれない。そう思えた。
家族に相談したら、きっと全員から反対されるだろう。父はもう長くはない気がするので、本人の意思を尊重し望む事をさせてあげるのが最善の選択・・・。やはり何度も行きつく答えはそこだった。
この後、家族や元病院に一言の相談も無く転院先を断ったことで、クレームが来たわけですが・・・・。
父は地域支援のヘルパーさんに依頼し、病状が悪化しても最低限の体制が取れるよう巡回の医師をお願いして、意外とスムーズに事が運んだ。
勿論、ヘルパーさんに全てを任せるのではなく、これまで通り、交代で実家に帰ることに変わりはなかった。
そういえば、天使から前に「別の方法がある。」と言われていたのを思い出した。後から「手配をするから心配しないで。」とも言われた。この事だったのかも知れない。
再び二か月後、運命を変える出来事が起きたのでした。
続く・・・。