天使から(4)
救急車で父が搬送されたとの連絡を受けた。
容態は落ち着いたとの事を伺ったが、静岡の病院へ到着し、部屋へ案内されるところで急変を告げる呼び出し音が鳴った。
部屋へ駆けつけると、
既に父は言葉を交わせる状態ではなく、苦しそうに呼吸をしていた。それでも私が来たことは何となく察しているようだった。
段々呼吸がスローダウンしてきた時、先生と看護婦さんが部屋から出て、最後は私と父の2人だけになった。
父に(今までありがとう)そう言うと(ありがとう。ごめんな。)そんな風に返って来たように思え、私の腕の中で静かに父は息を引き取ったのでした。
私が到着して20分も経たないうちに・・・。
やっと回復して来た矢先の突然の死。
ギリギリまで頑張ってたんだと思うと泣けて来たが、色々な事が思い出されて、今世の役目を終えた父に感謝の祈りをささげた。
先生との手続きが終わり、地域支援部の方へ連絡した際、思わぬことを
を唐突に尋ねられた。
それは犬のりゅうの事だった。
「こんな状況でこういう事を言うのは申し訳ないですが、りゅうちゃんはどうされるのですか?」
詳細を伺うと、「りゅうちゃんの事を気に入っているヘルパーさんがいて、もしりゅうちゃんを東京へ連れて帰られたり、どなたかお引き取り手がいない場合は、その方が引き取りたいと・・・。」
突然降って湧いたような話しに戸惑った。
ヘルパーさんは数名いらっしゃったが、その方とはお会いした事がなかった。
りゅうの事をどうすべきか、以前から悩みながらも答えが出せていなかった。
りゅうには特別な事情がある。
それは子犬の頃に虐待を受けていることだった。
病院に引き取られてそこで里親探しをしていた時に、両親が引き取って来た犬だった。
子犬の頃からとても臆病で、ちょっとした物音にも反応し怖がって中々人には懐かない、トラウマを抱えた犬だったのである。
唯一懐いているのは近所で散歩をして下さっていたおじさんだった。(その方は目が少し不自由だった)
東京のマンションではペットは禁止で、兄のマンションも当然NG。例え大家さんに内緒で飼ったとしても、りゅうが今いる環境は畑や海も近く、伸び伸びとたっぷり散歩をさせていたので、常に周りの音が気になる雑踏の都会の中では、りゅうにとってかなりのストレスになる事が予想出来た。何よりも今の場所がりゅうはとても気に入っているようだった。
それに子犬ならまだしもりゅうは10歳の成犬。中型犬だし座敷犬にはなかなか難しい。これから年々老いて世話が大変になっていく成犬を、どこの誰が引きとってくれるのか、犬好きでもそんな都合のいい人が、ましてやこの場所に現れるなんてことは無いだろう、りゅうには悪いが父亡き後は、私達の所で暮らしてもらうしかないかも。
そう思っていただけに、突然引き取り手が名乗り出たことが、信じられなかった。話しによればそのヘルパーさんは問題なくりゅうと接触できているとの事だった。
葬儀が終わった2日後に、その方のお宅へ伺った。
どんなご年配の方と思いきや、ヘルパーさんは30代の女性で美人の上、人柄がとても良くまるで天使のよう!
お会いした瞬間、私の心は決まった。
動物好きで猫ちゃんも3匹飼っておられ猫用のお部屋と、犬専用のスペースと小屋(暖房尽き)が用意され、覚悟の程が窺えた。実家よりも遥かに素晴らしい環境。
本当にりゅうでいいのか、世話をしていけるのか、懸念することはないか、色々な事を話し合い、ご本人が「覚悟はできています。」との事だったので、私達も「どうか末永く大事にしてあげてください。」とりゅうをお渡しする事に決断し頭を下げた。
りゅう自身もその方が気に入ったのか、しっぽを振って喜んでいる様子だった。
あれから月日が流れ、その後も彼女から散歩中のりゅうが楽しそうにしている動画などが度々送られてきた。父から「りゅうの事を頼む。」と言われていたので、幸せそうな様子を報告したら、父も向こうの世界で安心して喜んでいるようでした。
当時の事が思い出される今日、2月2日は父の命日。
この一連の出来事は、天使が介在し全て準備をして下さったことが理解でき、とても感動したので、乱文ですが過去の日記より、私の体験談を紹介させて頂きました。
「別の方法がある。」
「手配をするから心配しないで。」
よく「流れに逆らわず」とか「高次元にお任せする」という話しを聞いたことがあっても、ピンと来ない方も多いと思います。
もしあの時、私や兄弟が「一人暮らしだと心配だから病院に入院してもらっていた方が安心」というエゴの気持ちで、父が入院する事になったなら、父は残り僅かな人生を望めぬまま生きることになっていたでしょう。
そして、りゅうにとって素晴らしい飼い主さんとの出会いも無かったでしょう。
どちらに選択したらいいか迷う時は「それが愛に基づくもので、望むこと」を最優先に考えれば、答えが出ると思います。
高次元の存在達は色々なサインを出してサポートをして下さっていますが、時々聞いても回答をもらえません。
そういう時は「自分で答えが出せるよ」と言われているのです。
お願いして何でも答えてもらったら、自分で成長する意味が無くなってしまうので、その人に必要な事だけを教えて、陰ながら見守っているのです。
例えその時、理解に苦しむことが起きても、後でその意味が分かったり、何かに気付く事があります。その1つ1つを越えて行くことで、私達の中心にある光が輝き出し、本来の自分へと近づいて行けるのでしょう。
いつも高次元の存在達がサポートしてくれているので、恐れる必要はない!って事です。
ただ・・・もう事故は勘弁ですけどね(汗)