先日、鮭が不漁の話題に触れたので、この鮭について是非皆さんに知って頂きたいことがあります。
また、タイトルの「死のスイッチ」という意味についてもお伝えします。
鮭はお弁当のおかずでも定番。
手軽に食べることが出来る身近な魚でありますが、その鮭の人生は私達が想像 を遥かに越えてとんでもなく過酷です。
<鮭の遡上は感動するのか?>
私は以前、「鮭の遡上を見た人が感動して涙を流した」という記事を見て、(そこまで感動する程のものなのだろうか)と興味が湧いたのと、よく北海道で鮭を咥えた熊の木彫りがお土産品としてお店に並んでいますよね。
それが売り上げを狙った作り物で本当は鮭を捕ったりしないとでは?という疑問があったことからその真偽を自分の目で確かめるべく、2009年に秋の北海道を訪れたのでした。
しかしこの旅は予想に反してとてもショッキングで、貴重な体験をした旅となりました。
<鮭の生涯>
鮭は秋に産卵し卵は2か月かかって孵化。
50日程度で卵嚢の栄養分を吸収して春先頃に川から海へデビュー。
オホーツク海やベーリング海などの冷たい海域で回遊しながら1年~7年(平均して4年位)かけて海で育ち、成熟すると産卵しに故郷の川へ戻って来ます。
そして産卵を終え暫くして生涯を終えます。
~13年前の記録~
結構鮭が遡上に来ていました。
反対側は直ぐ海です。
所々傷を負って肉が見えている痛々しい鮭の姿が多く見られました。
しかし驚くのはここから。
遡上する先の上流へ目を向けると予想以上の難関が立ちはだかっているではないですか!
なんか険し過ぎ~Σ(・口・)!!
しかも一番奥はなに!?
そう思って近づいてみると・・・。
私は目が点になりました💦
衝撃的な高さです!!
大人の人間よりも高いじゃん!
こんなん無理でしょ!!人間でも登れないよ( ゚∀゚)!!
一番高い所まで辿り着いていないものの鮭達はどんなに高かろうが不可能と思える滝へと向かって泳いでいました。
所々ある難関を何度も何度もチャレンジしては流されて・・・。
聞くところによると、一番高い所をどうやらクリアしている鮭がいるとの事です。
(ウソでしょーー!!∑(*○*)!!
上がることを決めている鮭達にとって、不可能かどうかなんて関係ないんです。
そして鮭は意外と賢いのか、コツを掴み、テクニックを駆使して遡上して行くようです。凄い(・口・)!!
険しい道のりに挑み、体がボロボロになっても諦めない鮭達の姿に私は涙が出て来ました。
その場にいた人々も鮭達の姿に感動したようで、いつの間にか一緒に「頑張れ~!」とエールを送っていました。
鮭達を見ていたら、自分の悩みがちっぽけで、命がけではない事に気付き、
悩んでいることが馬鹿らしくなり・・・。
おそらく一緒にいた人達も自分の生活と重ねて何かを感じていたのかも知れません。
この時、あの記事が伝えていた意味が分かりました。
<ウトロのペレケ川>
水量が少ない時はかなり泳ぎにくいよう
で上流に辿り着けない鮭が多そうです。こちらも沢山の滝があります。
鮭は力の限り何度も何度もジャンプを繰り返していました。
川沿いから上流へと進んでみると、川幅が狭くなっており、人工的に階段式の滝が作られていました。
(これは鮭が上りやすくする為かもしれません。)
なんと鮭が2匹いるではないですか!
もう1匹は暗い所にいるので分かりにくいですが、力尽きて何度も下へ流されそうになっていました<(T◇T)>
ハラハラして見守っていたところ、何とか踏ん張って上の方へ泳いで行きました。(やったー(o^∇^o)ノ)
この先は少し小休止できる落ち着いた環境に入ります。
しかしまだまだ嫌という程滝が続きます。
私が鮭だったらそこまで粘れるのかな?そんなことをふと思ったり・・・(^▽^;)
人間で言うとオリンピック選手並み。
精神力と技術と体力が無いとここまでは上がってこれないでしょう。凄いツワモノ達です。
全ての川が過酷な条件とも言えませんが、比較的難易度が低い川でもボロボロになっている鮭を見かけます。
近年数量が減って遡上しにくいのも要因の1つと思われます。
これ程までしても僅かな数の鮭しか子孫を残せないのです。
しかし子孫を残す前に力尽きてしまう鮭もいます。
私達が食卓で食べる鮭は殆どが養殖。
そして札幌や中標津では毎年一定数の鮭を捕まえて安全な環境で孵化させ、故郷に戻って来てもらえるよう稚魚を放流する取り組みを行っています。
いかに彼等の遡上が命がけなのかこの時初めて知りました。
<更に過酷な遡上>
遡上するだけが大変なのではありません。
更に多くの脅威が待ち構えています。
海には漁師、遡上する川の河口には釣り人。
ちなみに川に入った鮭の採捕は禁止されています。(違反した場合は最大で6月以下の懲役と10万円以下の罰金)また、河口付近の採捕が禁止されている場所もある為、釣りをされる方は要注意です。
産卵の準備に入った鮭を捕ることはご法度!なお、川に入った鮭は海で釣る鮭と味が全く違って美味しくないらしいです。
天敵は人間だけでなくヒグマもやって来ます。
正直、これも自分の目で見るまでは信じていなかったのですが、本当に追いかけまくっていました。
ヒグマも鮭を捕るのは容易ではなく、成功率は低かったように思います。
しかし遂に捕らえられ生きながら食べられた鮭もいました。
<死のスイッチ>
鮭は海から川に入ったら「死のスイッチ」が入ります。
それは「死に向かう最終段階」
覚悟のスイッチが起動すると、死の準備が整った状態になり、どんな難関が待ち受けようが次の世代を残す為に何が何でも遡上するのです。
産卵しその役目を終えると鮭は命が尽きると言われています。
(実際は産卵後1カ月は生きているようですが)
命尽きた鮭は鳥やヒグマ等の生物達が越冬する為の大事な糧となります。
ただ、産卵前の遡上は川が浅瀬な為一番危険で悲劇が多く見られます。
卵を持った鮭は栄養豊富なので、それを狙ってヒグマは河口付近に現れるのです。
その前に、そもそもアラスカ方面からやって来る途中で、サケを好むネズミザメ達にも捕食されています。
ネズミザメはアオザメやホホジロザメと同じ仲間でとても獰猛な性格で私も北海道で見たことがあります。
初めて里帰りする鮭達にとっては、「最後の死の旅」であり、極めて困難で過酷な旅なのです。
後で調べてみて、こんなにも鮭達に立ちはだかる試練は多く、鮭いくら丼を食べて美味しいと言っていた自分が恥ずかしくなりました。
生きることは本当に「残酷」です。
私達は毎日命あるものを頂いているので、こうした生命の営みを理解し、心から感謝して、大切に有難く頂くことが供養になるのだと思います。
鮭の遡上を通じて、新しい命の為に終わる命、その生命の尊さ、生きることの素晴らしさを教えられたように思います。
現在、人間社会ではコロナで自殺者が急増しています。
悩みを抱えていらっしゃる方も多いでしょう。
ですが、どういう理由があるにせよ、命を粗末にせず、深刻に考え過ぎず、人生を楽しむ方向へ自分を導いてあげて欲しいと思っています。
今がどん底でも必ず夜明けの日は来ます。
私は鮭の遡上の季節になると、当時の光景が浮かび「生きる喜び」をもっともっと知っていこうという気持ちになります。