ハイアーセルフから(2)
その時(私は死んだ)と思った。
どこかで音が聞こえる。それが段々大きくなって来て、遠くへ行っていた意識が戻って来たのが分かった。
目の前にカタカタと壊れかけたワイパーが動いているのが見えて、やっと我に返り、この時初めて本当に事故った事を自覚。
錯覚だったのか、フロントガラスは割れていなかった。
真っ白に見えたのは、衝撃で白いエアバッグが開いたからだった。
(りゅうは!?)
慌てて助手席を見ると、りゅうは無事。怪我はしていなそうだがこの衝撃で怯えて丸くなっていた。
りゅうを安心させると、自分の体を見回した。
右手に擦り傷があり、手の甲は真っ赤に打撲の衝撃を物語っていたが、幸い体を動かすことができるので、どこも骨折はしていない模様。
ただ既に左手は右手と比べモノにならない位大きく腫れあがって来ていて、これは病院に行かないとやばいのでは?という状態だった。
煙が出て来たので急いで外へ出て、車体の前へ回り込み(やっちゃった)事を確認。
近所の人がこの衝撃音に何事かと飛び出て来て、色々心配して頂いたが、大丈夫ですと言って、父へTELして直ぐに病院へ向かった。
病院の玄関で父は待っていた。
あれこれ聞かれる前にりゅうと一緒にタクシーに乗せ、先に実家に帰ってもらった。
私はその後の事故処理の為再び現場へ。
JAFを呼んだり警察との現場検証、自動車保険会社へ事故手続きに伺ったりでお昼にあった事故なのに実家への帰宅が20時を過ぎてしまった。
車を廃車にしてしまったので、父に怒られるのを覚悟で謝ったら、「腕は大丈夫か?無理言って来てもらっているのにこんな目に遭わせて悪いことをした。本当にすまない。」と逆に父の方が謝ってきた。
いつも文句ばかり言っている父が私の事を気遣いながら、湿布まで貼ってくれたのでとても驚いた。
この後、自分で毎日ヒーリングを続け、病院に行く事無く、腕も首の鞭打ちも完治。
結果的に事故は起きてしまった。
あの時、もっと注意していれば、事故は起きなかったのか・・・。
そうではないように思えた。
当日の朝をよくよく思い返していた時、(事故があるから覚悟しといてね。)そう言われていた事をふと思い出したからだ。
事故は起こるべくして起きた。
ただ、これをきっかけに不仲な父との距離が縮まった事、ヒーリングの効果が試せたこと等、自分に必要な事が起きたのだと理解できた。
また、不思議に思えることがあった。
それはあの街路樹。
現場検証の時、激突して車が凹んだにも関わらず、全く傷が無かった。
車は凹んだのに何度その樹を確認しても、1つも傷が付いておらず、表面が擦れてもいなかった。
そして触るとコンクリートのように驚く程硬かった。
通常は器物損壊になるところだが、それは幸いにして免れることができた。
そしてこの後お思わぬ展開が・・・。続く。